テニス肘の保存的治療の評価の最近の研究報告
テニス肘の保存的治療(手術以外の治療)についてのまとめとメタアナリシス(複数の研究の統合分析)
Comparative Efficacy and Safety of Nonsurgical Treatment Options for Enthesopathy of the Extensor Carpi Radialis Brevis: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Placebo-Controlled Trials.
Lian J1, Mohamadi A2, Chan JJ3, Hanna P2, Hemmati D1, Lechtig A2, Nazarian A2,4.
Am J Sports Med. 2019 Oct;47(12):3019-3029.要約です。
方法
メタ分析
延べ2746人が対象
痛みと握力で評価治療開始4週後の短期的にはステロイド注射のみが痛みを改善したが、長期的にプラセボより悪化した。
5~26週の中期ではレーザーとボツリヌス毒素注射が痛みを改善した。
26週以後の長期では、体外衝撃波が痛みを改善した。
握力の点では、レーザーだけが、プラセボより良い結果だった。
副作用ではいろいろな治療の差はなかった。プラセボより副作用は多かった。
プラセボ治療では、軽度以下の痛みをもつ患者が短期では2%だったが、中期では92%に増加した。
結論
ほとんどの患者はプラセボ治療で短期で痛みが改善する。
短期では治療しても少ししか痛みが減らない。
治療により、プラセボより、いろいろな治療の副作用がある。
最初の4週間の治療にあたって、治療するか、経過観察とするか、患者特有の要因を医師は考える必要がある。
コメント
病態理解がない
著者らはタイトルにあるようにECRBの起始部病変を問題としています。
私は、肘の外側痛を訴える患者に対して、肘の前後、内外全てを評価します。
可動域、運動時痛、圧痛など。
そしてその患者個人に起こっている病態を理解します。
実際には、問題がECRBの起始部だけでない場合が多々あります。
その病態理解がないことが、保存的治療がうまくいかない、最大の原因ではないかと考えます。
ステロイド注射は行うべきでない
短期的に効果があったのがステロイドの注射で、これは現在も行われていると思いますが、長期的には成績が悪くなる。以前から指摘されていることではありますが、やはり、ステロイド注射は行うべきでない治療と考えます。
患者特有の要因
著者が指摘するように、患者特有の要因を考える必要があります。
これは、一つは個人個人の病態を正確に知ること、他は、真の原因である、患者の肘の使い方、負担、誤用を知る必要があるということだと考えます。